緑内障とは——症状や治療の概略
【この記事の要点】 緑内障は、眼圧などの影響で視神経が徐々に傷み、見える範囲(視野)が欠けていく病気で、日本人の40歳以上の7.6%にみられます。自覚症状がないまま進行しやすく、日本では緑内障のある方の約9割が未発見・未治療であったと報告されています。治療の基本は眼圧を下げることで、点眼薬・レーザー・手術など病状に応じた選択肢があり、早期に発見して治療を続けることで進行の抑制が期待できます。
「緑内障」という病名は知っていても、実際にどのような病気か、どのように進行し、どう治療するのかは分かりにくいと感じる方が多いのではないでしょうか。
この記事では、緑内障の基本的な仕組みから、症状・原因・検査・治療の流れまで、全体像を順番に解説します。
緑内障とは、どのような病気ですか?
緑内障とは、目で受け取った光の情報を脳へ伝える「視神経」が少しずつ傷み、見える範囲(視野)が徐々に欠けていく病気です。
視神経が傷む主な要因は眼圧(目の内部の圧力)で、眼圧が視神経に負担をかけることで神経線維が減っていくと考えられています。ただし日本人では、眼圧が正常範囲でも視神経が傷む「正常眼圧緑内障」が多いことが分かっています。実際、日本人の原発開放隅角緑内障(広義)の約92%が正常眼圧緑内障であると報告されています※1。
一度傷んで失われた視野は元に戻すことができません。そのため、進行を止める、あるいは遅らせることが治療の目的になります。
どのような症状が出るのですか?
緑内障の進行は多くの場合ゆっくりで、片方の目の見えない部分をもう片方の目が補うため、かなり進行するまで自覚症状が出にくいことが知られています。
日本のデータでは、次のように報告されています。
40歳以上の7.6%が緑内障(久山町研究・2022)※2
緑内障のある方の約9割が未発見・未治療(多治見スタディ・2004)※3
日本の視覚障害の新規認定原因の第1位は緑内障(全国調査・2023)※4
症状が進むと、視野の一部が欠ける、見える範囲が狭くなるといった変化に気づくことがありますが、その段階では病気がかなり進行していることも少なくありません。
なぜ緑内障になるのですか?
緑内障の原因ははっきり一つに特定できるものではなく、加齢・眼圧・家族歴・近視など、複数の要因が関わると考えられています。
代表的な要因は次のとおりです。
加齢:年齢が上がるほど発症しやすくなります
眼圧:高いほど視神経への負担が大きくなりますが、正常眼圧緑内障のように眼圧が正常でも発症することがあります
家族歴:血縁者に緑内障の方がいると、発症しやすい傾向が報告されています(多治見スタディでは、緑内障のある方の15.9%に家族歴があったのに対し、ない方では5.6%でした※1)。欧米の研究では、血縁者に緑内障の方がいる場合、発症リスクが3〜9倍程度高まるとの報告もあります※5,6
強い近視:視神経の構造上、緑内障のリスクが高まりやすいとされています(多治見スタディでは、中等度~強度の近視(等価球面度数-3D以下)でオッズ比2.60、弱度近視(-3D〜-1D)でもオッズ比1.85と報告されています※1)
これらの要因に心当たりがある方は、自覚症状がなくても一度検査を受けておくと安心です。
どのような検査で診断するのですか?
緑内障の診断には、主に眼圧検査・眼底検査・OCT(光干渉断層計)検査・視野検査を組み合わせます。いずれも身体への負担が少ない検査です。
眼底写真で視神経乳頭の状態を確認し、OCT検査で神経線維の厚みを数値化、視野検査で見える範囲の欠けを調べます。1回の受診で判定がつかず、期間をあけて再検査を行いながら経過を確認することもあります。
検査結果は、緑内障診療ガイドライン(第5版)※7 などの基準を踏まえて総合的に判断します。
どのような治療法がありますか?
現在の緑内障治療の基本は、眼圧を下げて視神経への負担を減らすことです。視野の欠けを治療で元に戻すことはできないため、今ある視野をできるだけ維持することが目標になります。
治療は、病状に応じて段階的に選択されます。
点眼薬:多くの場合、まず眼圧を下げる点眼薬から治療を始めます
レーザー治療:点眼薬の効果が不十分な場合などに、レーザーで眼圧を下げる治療(SLTなど)が選択肢になることがあります
手術:点眼薬やレーザーで十分な効果が得られない場合に検討します。房水の流れを改善する流出路再建術(iStent・Hydrus・線維柱帯切開術など)から、より高い眼圧下降効果が必要な場合の濾過手術(トラベクレクトミー・EX-PRESSシャント・PreserFloなど)まで、病期・病型に応じた術式があります
どの治療から始めるか、次にどの治療へ進むかは、眼圧の状態や視野の進行度によって異なるため、定期的な検査で経過を見ながら医師と相談して決めていきます。
受診の目安
自覚症状がなくても、健診で指摘を受けた方や、40歳を過ぎて眼科検診を受けたことがない方は、一度眼科での検査をおすすめします。
緑内障は自覚症状が出にくいまま進行することがあるため、症状の有無だけで受診を決めず、定期的な検査を受けておくことが早期発見につながります。
緑内障は進行すると失明につながることもある病気のため、診断を受けると大きな不安を感じる方も少なくありません。しかし、眼圧が特に高くない場合(日本人に多い正常眼圧緑内障を含む)は、視野障害の進行は比較的ゆるやかであることが多く、通院と点眼治療をしっかり継続することで、その進行をさらに緩やかにできることが分かっています。過度にナーバスになりすぎる必要はありませんが、自己判断で通院や点眼を中断せず、医師の指示に沿って治療を続けていくことが、視野を守るうえで大切です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 緑内障は治る病気ですか?
A. 一度失われた視野を元に戻す治療はありませんが、眼圧を下げる治療を続けることで進行の抑制が期待できます。早期発見・早期治療が視野を守るうえで重要です。
Q2. 眼圧が正常なら緑内障の心配はありませんか?
A. いいえ。日本人では、眼圧が正常範囲であっても視神経が傷む「正常眼圧緑内障」が多いことが分かっています。眼圧だけでなく、眼底検査やOCT検査、視野検査を組み合わせて総合的に判断します。
Q3. 治療は一生続ける必要がありますか?
A. 多くの場合、緑内障の治療は長期間にわたって継続します。点眼薬で経過をみながら、必要に応じてレーザー治療や手術を検討することもあります。自己判断で治療を中断しないことが大切です。
Q4. 手術が必要になるのはどのような場合ですか?
A. 点眼薬やレーザー治療だけでは十分に眼圧が下がらない場合や、視野の進行を抑えられない場合に手術を検討します。病期・病型に応じて、流出路再建術や濾過手術など複数の術式から選択します。
Q5. 家族に緑内障の人がいます。自分も検査を受けたほうがよいですか?
A. はい。家族歴は緑内障のリスク要因の一つとされています。自覚症状がなくても、一度眼科で検査を受けておくことをおすすめします。
医師監修:板橋もりや眼科 院長 守谷元宏 日本眼科学会認定 眼科専門医/難病指定医/身体障害者福祉法第15条指定医/慶應義塾大学医学部眼科学教室 特任助教 慶應義塾大学病院眼科(緑内障班)で緑内障手術指導に従事(執筆時現在)。
【参考文献】
※1 Suzuki Y, et al. Risk factors for open-angle glaucoma in a Japanese population: the Tajimi Study. Ophthalmology. 2006;113(9):1613-1617.
※2 Fujiwara K, et al. Prevalence of Glaucoma and Its Systemic Risk Factors in a General Japanese Population: The Hisayama Study. Transl Vis Sci Technol. 2022;11(11):11. doi:10.1167/tvst.11.11.11
※3 Iwase A, et al. The prevalence of primary open-angle glaucoma in Japanese: the Tajimi Study. Ophthalmology. 2004;111(9):1641-1648
※4 Matoba R, et al. A nationwide survey of newly certified visually impaired individuals in Japan for the fiscal year 2019. Jpn J Ophthalmol. 2023;67(3):346-352. doi:10.1007/s10384-023-00986-9
※5 Tielsch JM, et al. Family history and risk of primary open-angle glaucoma. The Baltimore Eye Survey. Arch Ophthalmol. 1994;112(1):69-73.
※6 Wolfs RC, et al. Genetic risk of primary open-angle glaucoma. Population-based familial aggregation study. Arch Ophthalmol. 1998;116:1640-1645.
※7 日本緑内障学会. 緑内障診療ガイドライン(第5版). 日本眼科学会雑誌. 2022

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